モデラーさんの作業部屋拝見

瀬川たかし様 寄稿/ミニカーでジオラマを作ってみよう!

1.ミニカージオラマの写真 製作:せがわたかし
ミニカーに情景を加えることで、物語性豊かなオブジェクトとして完成する。

きっと誰もが1度は手にしたことがあるミニカー。今のミニカーは様々なスケールがリリースされていて、国内外問わずクオリティも高く、プレイバリューのみならずディスプレイモデルとしても、高い完成度を誇るモデルが多い。

国産ミニカーとしてはタカラトミーさんのトミカが入手しやすく、最近ではディテールをさらに追求したトミカプレミアムシリーズや、ハイエンドトミカと言うべきリミテッドトミカなど、ラインアップに目を見張る。

また、コレクショントイ、いわゆる箱ガチャやガシャポンとしてのミニカーも、完成度が高く手を伸ばしやすい。あこがれの車両のミニカーを手にして、眺めるだけでも楽しいミニカーの世界。

しかしそれが手軽なジオラマや情景としても楽しめるとしたら、そこにはきっとホビーのみならず、インテリアとしての魅力も期待できるのでは?今回はミニカーを用いたジオラマメイキングを提案させていただきたい。

100円均一から始めるミニカージオラマの世界

トミカプレミアムを用いて、駐車場(パーキングスペース)のジオラマを作ってみよう!1/64スケールを目処として制作を進めていく。

まず、今回使用する資材やツールについてまとめておく。

100円均一で入手可能な資材
コルクシート
写真立て
絵の具(白と黒、オレンジ等)
ナイロン筆
マスキングテープ
木工用ボンド
使い捨てポリエステル手袋
画用紙もしくはコピー用紙を重ねたもの。
模型店などで入手可能な資材
タミヤ情景テクスチャーペイント 路面ライトグレイ
タミヤ情景シート(石畳)
クレオス ウェザリングカラーグランドブラウン
クレオス ウェザリングカラーうすめ液

 

2.今回制作するミニカージオラマに土台として使う写真のフレーム
まずベース(土台)として選択したのは、100円均一で入手できる写真立て。枠にバリエーション豊かなデザインがあり、またサイズも豊富に揃っているので100円とは思えない仕上がりが期待できる。

ワンポイント:写真立てには四方数mm程度、飾り枠がかぶさる範囲があるので、あらかじめ確認してから下書きの作業進めよう。

 

3.今回製作するミニカージオラマの配置をイメージする様子
今回は数ある駐車場形式の中でも、パーキングスペースをモチーフとした情景のメイキングを制作する。まずは写真立てにミニカーを置いて下書きを施す。実際にペンで書き込んでみることで、完成した際のイメージがより具体的にイメージしやすくなる。

 

4.今回製作するミニカージオラマの採寸をした画像
情景がイメージできたら、だいたいで良いので採寸を記入しておくと、メイキングを進めるにつれてより具体的、かつ迷うことなく進めることができる。下書きしてもこの後コルクシートで下書きが隠れてしまうので、スマホ撮影などで下書きを画像で押さえておこう。

 

5.今回製作するミニカージオラマに使用するコルクシート(ナチュラルコルククラフト 30×45cm 2枚入り)
こちらが今回用いたコルクシート。2枚入りで100円均一。コスパが良い。

 

6.コルクシートを写真のフレームサイズに切り取り、ボンドで貼り付け、クリップで固定す様子
今回は路面のテクスチャー(表面模様)再現の素材としてコルクシートを用いる。100円均一には様々なサイズや大きさのコルクシートが揃っている。

購入してきた1.5mm厚のコルクシートを写真立てのサイズに切り抜き、木工用ボンドで写真立てのベースに貼り付ける。写真立てのベースとコルクは両方とも、木材由来の素材なので木工用ボンドとの相性が良い。貼り付けたら四方を目玉クリップで固定して、乾燥を待つ。

 

7.ボンドが乾いた後、コルクシートに採寸した下書きを再現するコルクシートの接着後、乾燥したら下書きの画像を見ながら、だいたいの採寸をコルクシートの上に復元する。

 

コルクシートに色を塗ろう

8.水性絵の具の白と黒を水で溶いて、コルクに染み込ませるように塗っていく
コルクがそのまま道路路面の模様になる。そのため、コルクに直接着色していく。着色は2段階に分けて行う。まず、水性絵の具の白と黒を水で溶いて、コルクに染み込ませるように塗っていく。希釈はだいたい8倍程度。

ワンポイント:ひと塗りで発色させようとするのではなく、うすい塗料を塗り重ねることで発色を促すと、深みのある色調を得られやすい。

 

9.塗った水性絵具が生乾きのうちに、タミヤの情景テクスチャーペイント路面 ライトグレイを塗る。
次に、塗った水性絵具が生乾きのうちに、タミヤの情景テクスチャーペイント路面 ライトグレイを塗る。筆での作業が進めにくかったら手袋をつけた手指で情景テクスチャーペイントをコルクに刷り込む手法も有効。

また、タミヤの情景テクスチャーペイントは開封後は硬くなりやすい。その際には同社のアクリル溶剤で希釈することができるので、コルクへなじませる手法の1つとして提案したい。

 

10.1層目で塗った水性絵の具が生乾きでの作業を進めた場合、このように情景テクスチャーペイントの層に色がにじんでくる
ワンポイント:1層目で塗った水性絵の具が生乾きでの作業を進めた場合、このように情景テクスチャーペイントの層に色がにじんでくる。このにじみこそが路面の表現として、リアリティーあふれる完成につながる。

 

11.コルクシート拡大写真
こんな感じでコルクの隙間に情景テクスチャーペイントの粒子を刷り込むようなイメージで作業を進めると、平面ながら質感あふれる、カッコいい路面が仕上がる。

 

12.タミヤの情景シート
次に歩道部分の工作に着手する。歩道部分にはタミヤの情景シートを用いる。紙製の素材ながら表面模様もくっきりと立体的、かつ、ハサミで切ることができるので、手軽に扱うことができる。

 

13.コルクに施した下書きに沿って、情景シートの角を目玉クリップで固定する。
コルクに施した下書きに沿って、情景シートの角を目玉クリップで固定する。

 

14.情景シートに写真立てベースの境界線を鉛筆でなぞり、情景シートをカットする。
そのまま裏返して、情景シートに写真立てベースの境界線を鉛筆でなぞり、情景シートをカットする。

15.情景シートを木工用ボンドで貼り付け後の様子
情景シートを木工用ボンドで貼り付けて、歩道の配置が完了した。瞬間接着剤でも貼り付けは可能だが、瞬間接着剤を大量に塗ると薬剤が揮発して、目や肌に刺激が発生するので、注意すること。

タミヤの情景テクスチャーペイントが乾いたら、歩道部分に石畳模様の情景シートを配置する。情景シートを切り出す際にはジオラマのベースと情景シートを目玉クリップで固定し、裏面に境界線を鉛筆でなぞり、その通り切り出すと正確かつきれいにシートを切ることができる。

 

16.白線部分の採寸をするためにマスキングテープを貼っていく様子
マスキングテープをカッターマットに貼って、白線の採寸を求めよう。

 

路面に白線を引こう

白線は白絵の具を筆で塗って再現する。まっすぐ線を筆で引くのは大変なので、ここではステンシルという手法を使う。まず、マスキングテープを塗りたい線の形に切り出して整える。

17.マスキングテープの囲いを、白線にしたい部分にかぶせてベースに貼り付け、白絵の具を上からたたくようにして塗る
先ほど作ったマスキングテープの囲いを、白線にしたい部分にかぶせてベースに貼り付け、白絵の具を上からたたくようにして塗る。

ワンポイント:このときべったり塗るのではなく、ややドライブラシ気味(筆先に絵の具を含ませたら、いったんティッシュで拭き取る等、カサカサな程度)で、塗り重ねていくのがコツ。白絵の具は水などで希釈せずに用いること。

 

18.白線を引いたあとの様子
白線がきれいに引けた。もしマスキングテープからはみ出した際には、情景テクスチャーペイントを上がけ細塗りして補正しよう。

 

19.白線部分のアップ写真
ここが技ありポイント!
えのぐの白がしっかり定着せず、ややかすれている状態が今回の「白線引き」の狙い。コルクの路面が現実の路面同様でこぼこしているので、コルク粒子のへこんでいる部分には白絵の具がが乗らないよう状態が理想。

20.絵の具をチューブから出したストレートで塗ると白線がよりリアルに仕上がる
マスキングテープで作った囲いを用いて、下書きの通りに線を引いてみた様子。ひび割れを意識しつつも、しっかりと発色を得るには、絵の具を水などで希釈しないで、チューブから出したストレートで用いることがポイント。

 

21.白線部分のアップ写真
描いた線のアップ。このあとのウェザリングカラーでの作業で、ひび割れはさらに強調されて、メリハリがつく。

 

22.路面に側溝部分も追加した様子
道路面と歩道の情景シートの境界について、シートを貼ったままでは「貼りました感」が出るので、細切りにして灰色に塗った画用紙を貼って、側溝の印象を強調する。今回は植栽があるので控えているが、ペンなどで区切り線を引いて、側溝のフタの演出を加えても良いかもしれない。

 

道路の経年汚れを加えて仕上げよう。

23.路面の汚れを再現していく様子

クレオスのウェザリングカラー・グランドブラウンを専用薄め液で12程度に希釈した溶液を筆で塗り&ティッシュでおさえて余分な塗料を吸い取りながら、路面の汚れを再現していく。このときコルク粒子の隙間に、グランドブラウンのインクが入り込むので、白線に刻まれている経年のひび割れがより強調される。

ワンポイント:ティッシュで押さえる際はゴシゴシとこするのではなく、グッと上から押さえつけるようにして余分な塗料を吸い取ること。仕上げの塗装とはいえ、この「ふき取り」作業をしっかり行っておくと、「汚れすぎていない」自然な仕上がりが期待できる。

24.路面の汚れを再現した後の様子
ウェザリングカラー・グランドブラウンで汚しを加えた状態。ただペタペタと染み込ませるだけではなく、ティッシュをぎゅっと上から押しつけて、余分な塗料をランダムに吸わせてあえてムラを作るのが、路面の経年感を自然に仕上げるポイント。マルチブラックあたりを組み合わせても良いかもしれない。

ただし、ウェザリングカラーの使い過ぎは色調がくすんでくるので、注意が必要。しっかり拭きとろう。

25.汚れを再現した路面部分のアップ写真
この通り、白線や線を引いた部分の色むらがより強調されて、路面らしさが得られる。

 

歩道の植栽を作ろう

26.歩道の植栽スペースを再現するためにニッパーや木材を使って、小さい木箱を作成
100円均一などで入手した木材をペンチやニッパーなどで切り、箱型に組む。瞬間接着剤での作業が便利。

ワンポイント:接着剤は箱の内側にはみ出す分には、まったく問題ないので、しっかり接着しよう。

 

27.歩道の植栽スペースを再現するためにジオラマ用素材の草むらを使用
今回の植栽で使用した素材は「NOCH(ノッホ)グラスターフ」や、「プラッツ/ノッホ 多目的ジオラマ素材シリーズ草むら・草丈12mm(緑・花つき・赤・42株セット)。グルーガンで株ごとにまとめられているので、扱いやすい。

 

28.木箱に草むらのジオラマを接着剤でくっつける様子
木素材で組んだ自作の箱に、ジオラマ用の草素材を箱に押し込んで、瞬間接着剤で下面から固定する。この手法さえおぼえてしまえば、様々なサイズの植栽を作ることができるようになる。

 

29.植栽の完成写真
眺めているだけでワクワクするような植栽の完成!

 

30.コルクシート上に植栽とミニカー2台を配置して完成

31.コルクシート上にミニカー接着剤で接着させた後の写真
歩道と側溝に植栽を沿わせて瞬間接着剤で固定し、トミカを置いてジオラマの完成!写真立てにジオラマを作ると、ミニカーを置いて平面として楽しめる事はもちろん、車両を瞬間接着剤やねじ止めで路面ベースに固定することで、ジオラマを立ててインテリアボードとして楽しむこともできる。

路面のレイアウトは日常の景色として目にすることができるので、今回の技法を用いて、さまざまな路面のジオラマを再現してみよう!

最後に、完成画像など。

32.今回のジオラマを後方から見た様子

33.今回のジオラマを斜め上方から見た様子

34.今回のジオラマの路面部分を上から見た様子

35.今回のジオラマの真上から見た様子

36.今回のジオラマの真上からミニカー2台を並べて見た様子

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瀬川たかし
瀬川たかし。1980 年生まれ。株式会社セガワモデリング代表取締役。上海、ドバイなど国際模型コンテストのジャッジを務める。ジオラマ教室は世界各国で 190 回以上開催、参加はのべ 3800 人以上。制作依頼は国内外を問わず、作品は情景模型として仕上げることが多い。「ガンプラテクニックバイブル改造・ジオラマ編」作例製作・監修。
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