ガンプラを作っている人なら、一度は情報量の多いかっこいいガンプラに憧れますよね?
私は、YouTubeやXなどのSNSで多くの方の作品を見ていると、やはりオリジナリティあふれる作品の数々に魅力を感じます。
そこで今回は、前回までの「やすり掛け」や「合わせ目消し」から少しレベルを上げ、ディテール追加の入門である「スジ彫り」について解説していきたいと思います。
初心者の方でも簡単にチャレンジできるスジ彫りの手順とテクニックを紹介していくので、最後までお読みいただき、作品の完成度がワンランクアップする手助けとなれば嬉しいです。
まだ、やすり掛け編と合わせ目消し編をご覧になっていない場合は下記のリンクより読むことができます!ぜひご覧ください!
スジ彫りとは
スジ彫りは、ガンプラの表面に細い溝を彫る技術のことを指します。このスジ彫りを行うことで、素組の状態では物足りなかった立体感やディテールが強調され、完成品のクオリティを大幅に高めることができます。
ガンプラ作りにおいて、リアル感やメカメカしさというのは見る人にとって非常に魅力的な要素であり、製作者の技術力が際立つポイントでもあります。どんなラインを引くのかなどデザインは作る人によって異なるので、作品に自身のアイデンティティがでる楽しさもスジ彫りの魅力の1つです。
スジ彫りに必要な道具
スジ彫りを行うには、いくつか道具を準備する必要があります。今回は初心者の方でも揃えやすい道具をピックアップしたので、これらの道具を揃えて実際にスジ彫りにチャレンジしてみてください!
ガイドテープ
マスキングテープに似ていますが、こちらはガイドテープと言って、スジ彫り作業専用に作られたテープになります。マスキングテープでもガイドは作れるのですが、素材が柔らかく粘着力も比較的弱いので、力の加減が分からないとマスキングがずれて失敗してしまいます。
一方、ガイドテープはスジ彫り作業専用に作られたものなので、耐久性としっかりとした粘着力を持っています。そのため、力をかけてもずれにくく、初心者の方でも簡単にスジ彫りをすることができます。
マスキングテープでも力加減を熟知していれば、スジ彫りはきれいにできるので、マスキングでもモールドがぶれずにできるようになれば、一人前のモデラーと言えるでしょう。
シャープペンシル
スジ彫りの下書きにはシャープペンシルを使うのが一般的となっています。これは、シャープペンシルの芯が細いことにより、繊細なラインを引いたりするのに適しているためで、特にHGなどの小さいパーツにラインを引く際には必須のアイテムとなります。
けがき針とタガネ
けがき針とタガネはスジ彫り作業において最も重要な道具です。これらは主に、細かな線を引く際や深く溝を彫る際に使用します。
けがき針は名前の通り、先端が針のように細く尖っているので、細い線などを引きやすいのが特徴になります。また、タガネは種類によって刃先の形状が異なるため、彫る深さや幅を調整できるの特徴です。特にBMCタガネなどの専用タガネは、プロモデラーたちが愛用する高精度のツールとなっています。
ヤスリ
ヤスリはスジ彫りの仕上げ作業に必要な道具となります。スジ彫りを施した箇所には、微細なバリや不均一な削り跡が残ることがあります。これらを綺麗に整えることで、見た目の完成度を大幅に高めることができます。
スジ彫りの手順
まず、スジ彫りは下記のような手順で行うということを頭に入れておきましょう!
- シャープペンシルで下書き
- 下書きに沿ってガイドテープを張る
- ガイドテープに沿ってけがき針であたりを付ける
- あたりに沿ってタガネで掘り進める
- 彫った部分の表面をやすり掛けできれいに処理する
これらの項目を順番にこなしていくことで、スジ彫りでガンプラにディテールを追加することができます。なお、新規でディテールを追加しない場合(モールドの彫り直し)の場合にはすでにあるモールドに沿ってタガネで掘り進めて行くので、1番から3番までの工程は省くことができます。
モールドの彫り直し
先ほどの手順の説明で出てきた「モールドの彫り直し」というのは、ガンプラのディテール強化はもちろん、スミ入れをきれいに行う上で重要な作業のひとつです。この作業は、製品の成型段階ですでに入っているモールドに対して、再度モールドを彫り直すことを指します。初めから入っているモールドの多くは溝が浅く、スミ入れの際に塗料が上手く流れ込んでくれません。
今回の腕のパーツで言うと、縦に入った2本の線がありますが、左側は溝が浅くパーツがつながっているのがよくわかると思います。プラモデルをカッコよく見せるにあたって、「別パーツに見せる」というのは完成度に直接かかわってきます。なので、こういった個所にはモールドの彫り直しを行う必要があります。
右のラインを見る限り、太いタガネで彫ると左右非対称になるので、ここではは0.1mmの細いタガネを使います。タガネが準備出来たらモールドに置き、奥から手前に引くようにしてスライドさせましょう。ここでポイントとなるのは、力加減です。優しく力を加えるのは重要ですが、感覚的にはタガネの重さのみを使って引くというのが理想でしょう。変に力を加えてしまい彫の深さが不均一になってしまうと完成した際に違和感が残ってしまいます。
彫り終えたものがこちらです。
左右のラインの深さが同じに見え、彫る前と比べてもしっかりと別パーツ感が演出で来ていると思います。このように、ちょっとした手間を加えることで、素組であってもガンプラはかなりカッコよくなります。
さて、スジ彫りに少し慣れたところで、次は新たにモールドを彫る作業をやっていきましょう!
スジ彫りの基礎
先ほどまでは、すでにあるモールドに沿ってなぞるだけでしたが、ここでは新たにモールドを作るという作業を行っていきます。スジ彫りをするにあたり、いくつか押さえておきたいポイントが2つあるので、初めにそちらを紹介していきます。
1.角度と力加減のコントロール
角度に関しては、大体45度くらい傾斜をつけると彫りやすいと思います。タガネを倒しすぎたり立てすぎると、削れなかったり引っかかったりするので、「タガネ=45度」と覚えておきましょう。
続いては力加減です。力はタガネの重さのみを利用して引くイメージが大切で、それを何度も根気強く繰り返すことが重要になります。力が強すぎると深さが均等にならず、汚い外観になってしまうので注意しましょう。
2.ガイドテープの使用
スジ彫りを行う際には綺麗なラインを引くことが求められますが、これに関してはガイドテープがあれば怖いもの無しです!道具の紹介の際にガイドテープの説明をしましたが、テープ自体が固く、粘着力強いので本当に信頼できるガイドとなってくれます。
実践
上記のポイントを踏まえて、さっそくモールドを彫ってみましょう!
ライン引き
まずは、モールドを追加したいパーツを準備します。そこに自分の思い浮かべる理想のモールドをシャープペンシルで下書きしましょう。
ガイドテープの貼り付け
下書きが完了したら、その線に沿ってガイドテープを張っていきます。今回はS字のようなモールドを彫っていくので、ガイドテープは上の画像のように貼り付けてみました。
スジ彫り
ついに、「彫り」の作業です。ガイドに沿ってけがき針であたりを付け、タガネで少しずつモールドを彫り進めていきましょう。
あたりは下記の画像のように、モールドを彫り進めるうえで終着点を付ける作業になります。今回のモールドで言うと、赤い点にあたりを付けることで、タガネがその場所で止まって、必要以上に削るということを防いでくれます。
もし、ズレてしまったり、彫りすぎてしまったと感じた場合には、ズレた部分の傷が浅い場合は400番から600番当たりのやすりで表面を削れば、修正ができます。また、傷が深い場合は瞬間接着剤やパテなどで傷を一度埋めてから、再度スジ彫りを行うことをお勧めします。
自分の理想の深さまで掘ることが出来たら、ガイドをはがして仕上がりを見ていきます。
何もしていないパーツと比較してみると、しっかりとS字のモールドが彫れていますね。これで、スジ彫りは完成になります。
スジ彫りと聞くと、難しいことだと思いなかなかチャレンジできない方が多いと思います。しかし、今回の手順を見ればわかる通り、道具さえあれば全く難しいことではないんです。なので、ガンプラの完成度をワンランクアップしたい方は、ぜひこの記事を参考にチャレンジしてみてください!
【応用】スジ彫りテクニック
基礎が身についたら、次のステップとして応用テクニックに挑戦してみましょう!
応用テクニックとしては、テンプレート作成やタガネを使った段落ちモールドの作成が挙げられます。テンプレートは自分の好みのガイドを予め用意しておくことで、効率よくスジ彫りを行うことはもちろん、左右対称のモールドを彫る際にとても有効的なテクニックとなります。また、段落ちモールドは、タガネでパーツの角を削る単純作業なのですが、ガンプラのクオリティを上げることができるまさに裏ワザと言えるテクニックです。
テンプレート作成
テンプレートの作成にはシャープペンシル、マスキングテープ、プラ板を準備しましょう。
道具の準備が出来たら、まず彫りたいモールドの形をパーツにシャープペンシルで描きます。次に、その線に沿ってスジ彫りを行ないましょう。綺麗にモールドを彫ることが出来たら、上からマスキングテープを張り、デザインナイフでモールドをなぞるようにしてマスキングテープを切り取ります。
次に、切り取ったマスキングテープをプラ板に張り付け、切り取りを行い、裏返せば左右対称のモールドを彫ることができるテンプレートの完成になります。
最近では、金属で作られたテンプレートが市販されているので、より効率を求める方はこちらもおすすめとなっています。金型に沿ってなぞるだけのめちゃくちゃ便利グッズなので、一度も試したことのない方には、ぜひ使っていただきたい代物です。
段落ちモールド
段落ちモールドとは、パーツの合わせ目に多く使われるテクニックで、画像左のようなパーツに右のパーツのような立体感を持たせる加工方法です。
やり方としては、画像のようにプラ板をパーツの間に挟み込み、プラ板をガイド代わりにしてパーツをタガネで彫り進めていきます。なお、最近では段落ちモールド専用のタガネなども登場しているので、そちらを使って段落ちモールドを作るのもいいでしょう。
まとめ
スジ彫りはガンプラのディテールを向上させるために非常に重要なテクニックです。基本手順や道具の使い方、さらに注意点を押さえることで、初心者でもワンランクのガンプラを作ることができます。各ステップでのポイントを理解し、スジ彫りという技術を駆使して、あなたのガンプラに更なる魅力を加えましょう!
次回は、彫ったモールドに「スミ入れ」をする工程についてご紹介するので、ぜひカートイワークスのX(旧Twitter)やホームページをチェックしてみてください!